PC をコンパクトにしたくてケースを探していた時、ふと頭に浮かんだことがある。
「これ、マザーボード小さくしたらもっといけるんじゃね?」
もう完全にノリなんだけれど、実際やってみたらどうなんだろう。ちょん切ったら小さくなるのか?そもそも自作できるのか?
その疑問をそのままブログにしてみる。
◆ なぜそんなことを考えたのか
最近、小型 PC に興味が出てきて、Mini-ITX や NUC 系のマザーボードを見比べていた。
でもどれも「惜しい」。USB の位置が微妙、電源の取り回しが邪魔、あと 1cm 小さければケースがもっと自由に作れそう…みたいなもどかしさがある。
なら自作すれば?
と気軽に思ったのだけど、調べていくと“マザーボードの壁”が見えてくる。
マザーボードを自作するのは可能か?

結論:
個人レベルではほぼ不可能。
技術的にはできるけれど、経済的にも実務的にも成立しない。
◆ 理由1:部品点数が異常
マザーボードには数千〜数万の部品が乗っている。
抵抗、コンデンサ、フェライト、さらには配線パターン。しかも CPU ソケットやメモリスロットの規格は厳密で、配線の長さ・間隔がナノ単位の世界になる。
ハンダゴテ片手じゃ太刀打ちできない。
ほぼ宇宙船の装置みたいな精密さ。
◆ 理由2:配線設計の難易度がバグってる
PCIe や DDR メモリは「配線の長さが揃っていないと動かない」。
ミリ単位どころじゃない。
高速信号は“線の長さ=時間差”なので、ずれているとデータが破綻する。
つまり、
適当にちょん切った瞬間、通信規格が全滅する。
◆ 理由3:テスト環境が個人では揃わない
メーカーは高額な検査機器を使い、微細な電圧の揺れから信号の乱れまで全部チェックしている。
個人でその精度を出すのは現実的ではない。
じゃあ「特注」マザーボードは存在するの?
ここはちょっと面白い。
実は“企業向け”なら存在する。
完全オーダーメイドはハードルが高いけれど、次のような形ならある。
◆ 1. 産業用マザーボードメーカー
組み込み機器(ATM、医療機器、工場機械)向けに特注サイズのマザーを作ってくれる会社がある。
ただし「最小ロット100枚から」とか「設計費数百万円」とか、個人には優しくない。
◆ 2. 既存ボードをベースにカスタム
CPU やチップセットはそのままに、
・コネクタの位置変更
・不要機能の削除
・小型化基板
などに対応してくれる場合がある。
ただし 費用は数十万〜数百万 が普通。
◆ 3. OCP(Open Compute Project)のような企業用規格
Facebook や大企業向けに“シンプル化したマザーボード設計”を公開しているプロジェクトもある。
ただしこれはデータセンター向けで、個人PCとは用途が別。
◆ 個人が現実的に頼めるレベルは?
オーダーメイド系の会社は基本的に“法人取引前提”。
趣味レベルの「ケースに合わせて小さくしてほしい」はほぼ受けてくれない。
じゃあどうすればコンパクト PC を作れるの?
ここに一筋の光がある。
妥協ではなく“攻略法”。
◆ 1. Mini-ITX + Flex/TFX電源
すでに相当小さい規格なので、ケース次第でかなり自由に縮められる。
◆ 2. NUC系や超小型ボードを使う
メーカー製の超小型基板を流用する。
Intel NUC, ASUS PNシリーズ, ASRock DeskMini など。
これらは“コンパクトPCの限界を突き詰めた結果”なので、自作より確実。
◆ 3. ケースを自作する
むしろこっちのほうが現実的。
3Dプリンタ・木材・アルミ板などで外装を作り、既存マザーをギリギリ詰め込む。
多少の自由度ならこれで十分手に入る。
まとめ:ちょん切るのは無理だが、夢は諦める必要なし
マザーボードを個人で自作するのは、
「DIYで人工衛星作る」くらいの難易度。
技術と資金さえあれば可能だけど、現実的ではない。
ただし、
オーダーメイドの世界は存在するし、大企業は実際にやっている。
個人が小型PCの夢を追うなら、
既存マザーを最大限活かして ケース側で自由を作る のが最適解。
コンパクトPCを究める道は、
意外と“マザーボードをいじらない”ところから始まる。
不便さの中に工夫の楽しさが隠れている。
