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  • 「半導体=シリコン」だと思っていた話。

    「半導体=シリコン」だと思っていた話。

    そこから広がる“未来の材料”の世界が想像以上に熱かった。**

    気づけば、PCを開いたり、スマホを触ったり、AIの巨大モデルを使ったりする生活が当たり前になっている。
    その裏側で動いている“半導体”といえば、多くの人は 「シリコン(Silicon)」 を思い浮かべるはず。
    正直、自分も長いあいだ “半導体=シリコン一択” だと思っていた。

    でも調べてみると──世界はとんでもないことになっていた。
    シリコンは確かに王者。でも、その周りには 次世代候補が何人も出てきていて、しかもそれぞれ能力が違う。
    ちょっとRPGのパーティー編成みたいに、“用途ごとに強いキャラが違う”状態になっていた。

    この記事では、「シリコン以外の半導体がどう進化しているのか」「なぜ置き換えが進んでいないのか」「それでも未来に向けて何が起きているのか」を、初めて知った人でもワクワク読めるようにまとめていく。


    ■ シリコンはなぜ“王者”なのか

    シリコンって、実は地球の地殻に大量にある“砂”の仲間。
    安い、扱いやすい、酸化膜(SiO₂)が自然に作れる、熱にもそこそこ強い。
    技術者が60年以上「使いやすいじゃん」と言い続けた結果、
    世界中の工場も製造装置もシリコンに完全最適化されてしまった。

    つまりシリコンは性能だけじゃなく、
    “人類の工業の積み重ね”という巨大な後ろ盾を持つ存在。
    これが強い。

    でも、微細化の限界が近づいてきていて、
    「じゃあ次は誰を使う?」という空気がじわじわ強まっている。


    ■ 実はこんなにある、シリコン以外の半導体材料

    ここからは、シリコンしか知らなかった自分が驚いた“次の候補たち”を紹介する。


    ● 窒化ガリウム(GaN)

    家電のACアダプタを小さくした立役者。
    高電圧・高速スイッチングが得意で、スマホ充電器の“うす型&高効率化”はほぼGaNの力。

    ・ただしCPUやGPUには向かない
    ・パワー系専門のエリート

    → シリコンを倒す存在ではなく、シリコンを支える“相棒”


    ● 炭化ケイ素(SiC)

    EV(電気自動車)の効率アップに直接効く材料。
    高温・高耐圧に強いので、車載用途で大活躍中。

    ・EV化が進むほど需要が増える
    ・すでに実用化されている

    → パワー半導体界の本命


    ● シリコンゲルマニウム(SiGe)

    IntelやTSMCが採用している“スピード強化剤”。
    シリコンでは限界が近い部分を補強するようなイメージ。

    ・CPUの一部層で使われ始めている
    ・全面置換ではなく“部分的に組み込む”

    → シリコンの身体能力を底上げするブースター


    ● グラフェン / MoS₂(2D材料)

    研究者のテンションが一番高い分野。
    原子1層レベルで薄いのに、電子移動速度が理論上とんでもなく速い。

    ・トランジスタの試作は多数成功
    ・でも量産が鬼ムズ
    ・産業化は2030年代後半〜40年頃が現実的ライン

    → 性能は夢がある。ただし「工場」に持ってくるのが地獄


    ● ダイヤモンド半導体

    物理性能だけ見たら最強。
    熱にも電圧にも強く、電子移動も速い。

    ・でも加工が難しすぎて高価
    ・一般用途には不向き
    ・軍事・宇宙・特殊産業向けの未来が濃厚

    → 伝説の武器だけど、コストが神の試練


    ■ 「じゃあ、なんでシリコンはまだ主役なの?」

    理由はシンプルで強烈。

    “安く大量に作れる”
    “既に世界中の工場が最適化されている”
    “充分に高性能”

    この3つが揃った材料は、今のところシリコンしかない。
    だからシリコンの牙城は簡単には崩れない。

    たとえばグラフェンがいくら優秀でも、
    グラフェン対応の装置を新しく作り、
    世界規模で量産できるレベルに持っていくコストは天文学的。

    材料が強い=勝つ
    じゃなくて、

    「材料+製造設備+人類の産業の積み重ね」
    この3つが揃ってようやくチャンピオンになれる。


    ■ 現実的な未来像

    実際のところ、2030〜2040年の半導体世界はこうなる可能性が高い。

    ・シリコンは主役のまま
    ・CPU/GPUの一部にGeや2D材料が組み込まれる
    ・パワーデバイスはGaN・SiCが主流
    ・特殊用途はダイヤモンドなど個別最適

    つまり未来は
    “ひとつの材料で全部まかなう時代”じゃなくなる。
    それぞれの役割に最適な素材を混ぜて使うハイブリッド時代。

    PCの中を見るとき、
    「このチップはシリコン、この電源周りはSiC、この充電器はGaN…」
    みたいに、用途ごとにキャラが違う未来が見えてくる。


    ■ まとめ

    「半導体=シリコン」
    この考え方は実用上は正しい。
    でも世界の研究現場は、すでに “次の選手たち” を並べて、性能や製造性を徹底的に比較している。

    シリコンが絶対王者であり続けるのは、材料としての性能だけじゃなく、
    “人類が育ててきたインフラそのもの”がシリコンを支えているから。

    その上で、
    GaN、SiC、SiGe、グラフェン、MoS₂、ダイヤモンド…
    それぞれがシリコンでは届かない分野を補う形で登場し、
    これからの半導体は 用途別最適化時代に突入 していく。

    AIも、PCも、EVも、通信も──
    すべては材料科学の進化に深く結びついていて、
    未来の技術は“どの材料を選ぶか”で大きく変わる。

    技術の世界は、知れば知るほど広くて面白い。
    次に何が来るのか、ワクワクが止まらない。