――商品の質問欄に潜んでいた、静かな侵入の入り口。
ハッキングと聞くと、ウイルス感染や突然の警告画面を想像する人が多い。
しかし近年増えているのは、何も起きていないように見えるハッキングである。
通知も出ない。
端末も正常。
それでも侵入は成立している。
これが「気づきにくいハッキング」だ。
実際に起きた、Yahoo!フリマでの違和感。
ある日、Yahoo!フリマで出品している商品の「質問欄」に、不自然な投稿が表示されていた。
内容は
「アカウントに異常があります」
「至急確認してください」
といった趣旨だった。
そして本文の下にはURLが貼られていた。
重要なのは、これがメッセージ機能ではなく、商品の質問欄だったという点である。
なぜ質問欄が使われるのか。
多くの人は
「質問欄=購入希望者からの連絡」
という認識を持っている。
つまり、警戒心が下がる。
さらに質問欄は
・誰でも投稿できる
・公式通知と混ざって見える
・通知が来ない場合もある
攻撃者にとって、非常に都合がいい場所だ。
公式サービスは、質問欄で警告を出さない。
Yahoo!フリマを含む大手サービスが、
商品の質問欄を使ってアカウント異常を知らせることはない。
本物の通知は
・アプリ内通知
・公式メール
・ログイン後の管理画面
に必ず集約される。
質問欄+外部URLという組み合わせは、
典型的ななりすまし手口である。
URL誘導の正体。
貼られているURLの先にあるのは、
Yahoo!のログイン画面そっくりの偽サイトである可能性が高い。
ロゴも色も配置も同じ。
スマホでは特に見分けがつかない。
ここでIDとパスワードを入力すると、
その情報がそのまま盗まれる。
ウイルスは不要。
警告も出ない。
これが「静かな侵入」の正体だ。
入力した瞬間、何が起きるのか。
この時点で、攻撃は成功している。
しかし、多くの場合すぐに被害は出ない。
出品はそのまま。
ログインも可能。
通知も変わらない。
だから気づかない。
攻撃者が最初にすること。
奪ったアカウントで、すぐに不正出品はしない。
まず行うのは観察だ。
・取引の流れ
・売上金の扱い
・支払い方法
・登録情報
違和感が出ないタイミングを待つ。
なぜ請求・売上金が狙われるのか。
最近増えている被害は、
アカウント破壊ではなく金の流れの改変である。
・売上金の送金先変更
・支払い方法の差し替え
・連携サービスへの不正ログイン
少額であれば、数週間から数か月気づかれない。
ログを見ても
「正規アカウントによる操作」
としか表示されない。
なぜ気づけないのか。
理由は単純だ。
すべて正規情報での操作だからである。
正しいID。
正しいパスワード。
正しい手順。
セキュリティソフトは反応しない。
最後に判断するのは、人間だけだ。
AIが詐欺を自然にしている。
このような投稿が増えている背景にはAIがある。
文章は不自然ではない。
日本語も丁寧。
違和感のない言い回し。
「怪しい日本語で見抜く」時代は終わった。
個人アカウントほど狙われやすい。
この攻撃は企業だけの問題ではない。
フリマ。
ブログ管理画面。
クラウド。
個人のアカウントは
・防御が甘い
・監視されていない
ため、狙われやすい。
今回のケースが示す教訓。
今回のYahoo!フリマの質問欄の件は、
被害が起きていなくても立派な事例である。
「公式っぽく見える場所」
「普段使う機能」
に紛れ込むのが、今の攻撃だ。
防ぐためにできること。
・質問欄やコメントのURLは踏まない
・必ず公式サイトから直接ログイン
・二段階認証を有効にする
・ログイン履歴と売上金設定を定期確認
これだけで被害は大きく減る。
まとめ。
何も起きていない場所こそ疑う。
現代のハッキングは、壊さない。
騒がない。
気づかれない。
商品の質問欄ですら、入口になる。
知っているだけで、防げる被害は確実にある。
気づきにくいハッキングは、
すでに日常の中に入り込んでいる。


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