AI時代が生み出した“メモリ価格高騰”の裏側
パソコンを自作している人、メモリ増設を考えている人のあいだで、
最近よく聞く言葉がある。
「RAM、高くなってない?」
実際、ここ1〜2年でメモリ価格は大きく上昇している。
しかもただの一時的な値上がりではなく、世界的な半導体事情が深く絡んだ“必然的な高騰”なのだ。
この記事では、
RAM(メモリ)がなぜここまで高くなったのか、
その理由をシンプルに、でも本質的に解説していく。
1. AIブームでメモリ需要が爆発している
ChatGPT、画像生成AI、SunoなどのAIサービスが世界中で使われている。
そしてこれらのAIが動く巨大データセンターでは、
大量のDRAMやHBM(高帯域幅メモリ)が必須 だ。
特にHBMはCPUやGPUの横に積み重ねて使う特別なメモリで、
製造難易度も価格も普通のRAMとは比べ物にならない。
メーカー(Samsung・Micron・SK hynix)は収益の大半をAI向けに注ぎ、
一般向けRAMの生産ラインは縮小してしまった。
結果として、
AI需要のせいで普通のPC向けRAMが不足 → 価格上昇
という流れになっている。
2. メモリメーカーが“赤字回避”のために供給を絞っている

数年前、メモリ価格が歴史的な安値になった。
安すぎて、メーカー側が大赤字になるレベルだった。
その反動が今。
メーカーは意図的に減産し、
供給を減らして価格を引き上げる という戦略をとっている。
「企業が利益を守るための調整」が行われているため、
市場に流れるメモリの量が少なくなり、値段が高止まりしているのだ。
3. DDR4からDDR5への移行期で価格が乱れやすい
現在はメモリの世代交代(DDR4 → DDR5)が進行中。
このタイミングでは以下の現象が同時に発生する。
・DDR4は需要減+生産ライン縮小で逆に高騰
・DDR5は需要急増で高止まり
つまり、
どちらの規格を買っても高い時期
という、ユーザーに厳しい局面にある。
4. 円安が日本価格をさらに押し上げる
日本独自の事情として、円安の影響が大きい。
メモリはすべて輸入製品なので、円安になると価格がそのまま上乗せされる。
世界的には値上がり幅が小さくても、
日本ではそれ以上に高くなることがある。
5. HBM需要の急増で市場が不安定化している
NVIDIAのAI向けGPUが大量に使うHBMは、今もっとも製造が難しい半導体のひとつ。
3D積層構造で歩留まり(成功率)が低く、失敗すればまるごと廃棄という厳しい世界。
このHBMに各メーカーが人材・設備を集中しているため、
通常のPC向けメモリの生産がさらに圧迫されている。
AIの成長がそのままRAMの価格に影響する時代
になってしまったわけだ。
まとめ:RAM高騰は“AI時代の宿命”でもある
RAMが高い理由をざっくりまとめるとこうなる。
- AI向けメモリ需要が急増
- メーカーの減産戦略で供給が少ない
- DDR5移行期で価格が不安定
- 円安で日本だけ割高
- 超高難度のHBM製造が市場全体を圧迫
つまり、どの要因も一時的ではなく、構造的なものばかり。
しばらくの間、RAMは 大きく値下がりしにくい時代 が続く可能性が高い。
今後どうなる? 値下がりのタイミングは?

現状では、
・メーカーの生産能力がHBMに追いつく
・DDR5が完全に普及し価格が落ち着く
・為替が改善する
こうした条件が揃わない限り、価格が大きく下がる見込みは少ない。
特にAI需要はまだ伸び続けているため、
メモリ市場は“高価な時代”が続きそうだ。

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